DeepLの訳文は、今でも頭ひとつ抜けています。

自然さ、専門用語の扱い、文の切り方。翻訳の品質という一点だけを見るなら、DeepLを推す理由は十分にあります。この記事は「DeepLをやめよう」という話ではありません。

ただ、DeepL Proを契約している人の中には、無料版でも足りていたかもしれない人と、そもそも別の道具で足りる人が混ざっているはずです。そこを切り分けます。

Proにすると何が変わるか

DeepLの無料版と有料版の主な違いは、翻訳の品質ではなく制限です。

無料Pro
テキスト翻訳の文字数上限あり無制限
ファイル翻訳(Word・PDF等)回数制限あり大幅に緩和
用語集制限あり拡張
データの取り扱い翻訳テキストを保存しない設定

個人向けのStarterプランは、年払いで月$8.74〜$10.49程度(情報源により差があります。月払いは5割ほど高くなります)。年間で約$105〜126、日本円でおおむね17,000〜20,000円/年です。

つまり、**Proに払っているのは主に「量」と「ファイル」と「データの扱い」**です。1文だけ訳すときの品質は、無料版でも同じです。

解約すると本当に困る3つの用途

正直に書くと、次の用途ではProを続けるべきです。

1. 文書を丸ごと訳す。 契約書、仕様書、論文、マニュアル。WordやPDFをそのまま投げてレイアウトごと訳す機能は、他で代替しにくい。回数制限のある無料版では業務になりません。

2. 用語集を運用している。 製品名、社内用語、業界特有の訳語を統一する必要があるなら、用語集は必須です。「毎回同じ訳になる」ことに価値がある仕事は確実にあります。

3. 翻訳テキストを保存されたくない。 機密文書を扱うなら、データの取り扱い条件は契約理由そのものです。ここは金額の話ではありません。

この3つのどれかに当てはまるなら、比較する必要はありません。DeepL Proが正解です。

実は使っていないかもしれない用途

一方で、Proを契約している人の中には、こういう使い方が中心の人もいます。

  • 英語のドキュメントを読んでいて、一文だけ意味を確認する
  • 海外からのメールで、含みのある言い回しを確認する
  • GitHubのissueやリリースノートを追う
  • 論文のアブストラクトを読んで、本文を読むか判断する

この使い方では、文字数の上限にもファイル翻訳にも用語集にも、ほとんど触れません。 使っているのは「短い文の翻訳」だけです。

そして、この用途で本当に効くのは訳文の品質ではありません。引くまでの手数です。

1文引くたびに、7手かかっている

一文を訳すとき、実際にはこれだけの操作をしています。

選択する → ⌘Cでコピー → ブラウザのタブを探す → 翻訳サービスを開く → 入力欄をクリック → ⌘Vで貼る → 読む → 元のタブに戻る → 読んでいた場所を探す

そして毎回、読んでいた場所を見失います。 技術文書でも論文でも、文章は前後のつながりで意味が決まるので、1文ごとに離脱すると理解の質が落ちます。

MacSide AIの⌘C+Cは、この往復をなくします。テキストを選択して⌘Cを2回。読んでいるページの上にパネルが開いて、そのまま答えが返ってきます。 タブは移動しません(詳しくは⌘C+Cの記事に書きました)。

しかも、実行する指示(プロンプト)を自分で決められるので、翻訳だけでなく用語解説・要約・平易化にも設定できます。

DeepL ProMacSide AI Pro
訳文の品質◎ 専用サービスの強み
文書まるごとの翻訳
用語集
データを保存しない設定
読みながら1文引くタブ移動が必要⌘C 2回
翻訳以外の指示○(要約・解説・平易化)
価格年$105〜126程度¥280/月 または ¥9,800 買い切り

判断は1問

先月、DeepLに「ファイルを」投げましたか。

投げたなら、Proを続けてください。 ファイル翻訳と用語集は代替が効きません。

投げていないなら、使っているのは短文翻訳だけです。 その用途に年間17,000〜20,000円を払い続ける必要があるかは、一度考える価値があります。

無料版に戻して困らないなら、それが答えです。困るなら、Proが必要だったということです。試すのが最も確実な検証方法です。

併用という選択肢

どちらか一方に決める必要もありません。

  • 文書の翻訳:DeepL(必要な月だけProにする、という運用も可能です)
  • 読みながらの1文:⌘C+C

この分け方なら、DeepLを開く回数が減るので、無料版の制限に当たりにくくなります。「ファイル翻訳のときだけDeepLを使う」なら、無料版で足りる月も出てくるはずです。

よくある質問

MacSide AIの翻訳品質はDeepLと同じですか

同じではありません。翻訳専用に最適化されたサービスと、汎用のAIに指示を出す仕組みでは、性質が違います。読解の補助としては十分に機能しますが、納品物としての訳文を作る用途にはDeepLの方が向いています

文書ファイルを翻訳できますか

できません。ファイルまるごとの翻訳が必要なら、DeepLなどの専用サービスを使ってください。

用語集は使えますか

用語集の機能はありません。ただし、プロンプトに「この語は◯◯と訳す」といった指示を書いておくことは可能です。

日本語から英語も訳せますか

プロンプトを設定すれば、日本語→英語も同じショートカットで実行できます。

DeepLの無料版と併用できますか

できます。むしろ、その組み合わせが現実的です。

「品質」と「距離」は別の話

翻訳ツールを比べるとき、話題はたいてい訳文の質に集中します。それは正しいのですが、日常的に効いているのは距離の方であることが少なくありません。

どれだけ良い訳が出ても、引くのが面倒なら引かなくなります。そして引かなかった文は、なんとなく分かった気になったまま通過します。その積み重ねが、読み終わったときの理解を曖昧にします。

DeepL Proを解約すべきかどうかは、品質の問題ではありません。あなたが払っている「量」と「ファイル」を、先月使ったかどうかの問題です。