メモを取らなかった理由は、たいてい「面倒だったから」ではありません。開くのが間に合わなかったからです。

会議で誰かが数字を言う。アプリを開こうとする。ウィンドウを探す。新規メモを作る。タイトルを付けるか迷う。……その間に、会議は次の話題へ進んでいます。結局、頭の中に置いておくことにする。そして15分後には忘れています。

思いつきも同じです。作業中に「あ、これ試してみたい」と思う。でもメモアプリを開くと、今やっている作業が後ろに隠れる。だから「あとで書こう」と思う。あとで書かれたメモを、私はほとんど見たことがありません。

メモアプリに必要なのは、多機能さより先に、間に合うことです。

開く動作が、思考を邪魔しない

ブラウザはそのまま。画面の端からメモが出てきて、見ながら書けます。

動画では、ブラウザを開いたまま、画面の右端からメモが出てきます。ブラウザは消えていません。後ろに残ったまま、その横に書く場所ができます。

地味ですが、決定的な差です。メモを開くために、今見ているものを手放さなくていい。

会議中なら、資料を見ながら書けます。調べものの最中なら、記事を見ながら書けます。コードを読んでいるなら、コードを見ながら書けます。「見ながら書く」ができないメモアプリは、実は使う場面がかなり限られます。

書き味はNotionに近く、/ から見出しやリストを差し込めます。ただ、日々のメモで効いてくるのはそこではありません。開くまでの速さです。

頭に抱えておく必要がなくなる

すぐ書けることの一番の効果は、記録が残ることではありません。頭を空にできることです。

人が同時に保持できることは、思っているより少ない。会議中に「この数字あとでメモしよう」と決めた瞬間から、それは頭の容量を占め続けます。しかも忘れないように意識し続けるので、目の前で進んでいる話への集中が落ちます。

つまり「あとで書く」は、メモを先送りしているのではなく、その間ずっと自分に負荷をかけ続けている状態です。

書き留めた瞬間、それを手放せます。頭が空くと、次の話をちゃんと聞けます。1回のメモで解決するのは記録の問題ではなく、注意の問題です。

正確さは、時間とともに落ちる

もうひとつ、すぐ書けることの効果があります。内容が劣化しないことです。

数字、固有名詞、日付、金額、URL。これらは聞いた直後にしか正確に残りません。15分後に思い出して書くと、こうなります。

  • 「32,400円」→「たしか3万くらい」
  • 「8月12日14時」→「来週の水曜の午後」
  • 「ASDiscoveryDescriptor」→「なんとかDescriptor」

曖昧になった情報は、あとで確認し直すことになります。 相手にもう一度聞く。議事録を探す。履歴をさかのぼる。書き留めるのに5秒だったものが、確認に5分かかります。

その場で書ければ、正確なまま残ります。これは記憶力の問題ではなく、書ける状態にあったかどうかの問題です。

会議の流れを止めない

会議中に「すみません、ちょっとメモします」と言って数秒止まる。誰もが経験のある場面です。

止まるのは、開くのに時間がかかるからです。アプリを探して、新規メモを作って、タイトルを決める。その数秒のあいだ、相手は待っています。だから多くの人は止めずに済ませようとして、結局書かない。

画面の端から出てくるだけなら、会話を止める必要がありません。相手の話を聞きながら、そのまま打てます。「メモを取る」が、独立した動作ではなくなります。

電話中も同じです。相手が言った日付や金額を、聞きながらそのまま残せます。

進行中のものを、開いたままにしておける

メモが1件で完結することは、あまりありません。

会議のメモを取っている最中に、別件の連絡が来る。作業中に、無関係なアイデアを思いつく。調べものをしていて、副産物として別のメモが必要になる。

このとき、メモアプリが1画面1メモだと、そのたびに「保存して、一覧に戻って、別のメモを開いて、また戻る」が発生します。戻ってきたときには、何を書いていたか忘れている。

MacSide AIのメモは、上部にタブが並びます。ブラウザのタブと同じ感覚で、進行中のメモを開いたまま置いておけます。切り替えは1クリックです。

これも結局は速さの話です。探す時間がゼロなら、書くのをやめる理由がなくなります。

「あとで整理する」を、前提にしない

多機能なノートアプリを使い始めた人が、だいたい半年で行き着く場所があります。整理しきれないメモの山です。

フォルダを作る。タグを付ける。テンプレートを整える。データベースを設計する。最初は楽しい。でも、日々のメモは整理を待ってくれません。気づくと「未整理」フォルダだけが増えていきます。

MacSide AIのメモは、そもそも整理を前提にしていません。すぐ開いて、すぐ書いて、タブに置いておく。それだけです。

これは機能が足りないという話ではなく、役割の違いです。長期的に育てるナレッジベースが必要なら、専用のノートアプリを使うべきです。でも、日々のメモの9割は、書いた日から3日以内にしか使わないものです。会議の決定事項。作業のTODO。調べた結果。試したいこと。

その9割に、重い整理は要りません。要るのは、間に合うことです。

メモに書いたコードが、Webページで動く

もうひとつ、このメモには変わった役目があります。

Chrome拡張の「MacSide – Browser Connector」を入れると、メモに書いたユーザースクリプトを、実際のWebページで実行できます。Tampermonkeyのような使い方が、メモアプリの中でできるということです。

このブログで配布しているYouTubeNetflixDisney+の同時字幕も、この仕組みで動いています。コードをメモに貼るだけで、動画に日本語+英語の字幕が2段で出るようになります。

実行されるのは自分のMacのメモに書いたコードだけで、MacSide AIを終了すればブラウザ側のスクリプトも止まります。

つまりこのメモは、書き留める場所であると同時に、動かす場所でもあります。

こんな場面で効きます

  • 会議中に、資料を見ながら決定事項をその場で書き留める
  • 電話で言われた日付や金額を、聞きながら正確に残す
  • 作業の途中で浮かんだアイデアを、作業を止めずに置いておく
  • 調べものの結果を、記事を見ながらまとめる
  • 「あとで確認する」ことを、忘れる前に手放す
  • 進行中の案件ごとに、タブを開きっぱなしにしておく

よくある質問

Notionの代わりになりますか

用途によります。チームで共有するドキュメント、データベース、長期的なナレッジ管理が必要ならNotionが向いています。MacSide AIのメモは、その手前にある日々の走り書きを担当します。書き味は近いですが、目的が違います。

メモは何件でも開けますか

上部のタブに並べる形で、複数のメモを同時に開いたままにできます。ブラウザのタブと同じ感覚で切り替えられます。

書いたメモはどこに保存されますか

自分のMacの中に保存されます。クラウドに同期するタイプのサービスではありません。

書式は付けられますか

/ から見出しや箇条書きなどを挿入できます。走り書きのまま置いても、あとから整えても構いません。

メモに書いたコードを実行できるって本当ですか

Chrome拡張「MacSide – Browser Connector」と組み合わせると、メモに書いたユーザースクリプトを許可したWebサイトで実行できます。詳しくは同時字幕の記事で実例を配布しています。

書き留められなかったことは、なかったことになる

思いついたこと、聞いたこと、決まったこと。それらは、書き留められなければ存在しなかったのと同じです。

そして書き留められるかどうかは、記憶力ややる気ではなく、そのときメモが開いていたかどうかでほぼ決まります。会議は待ってくれないし、思いつきは10秒で消えます。

MacSide AIのメモは、画面の端にいます。開くのに手順は要りません。今見ているものを隠しません。書いたものはタブに残ります。

大したことをしているわけではありません。ただ、間に合う。日々のメモに必要な性能は、実のところそれがほとんど全部です。